四畳半王国見聞録 【7/10】

むーいつも通りの阿呆な大学生のお話かと思いきや、普段とは毛色の違かった森見登美彦最新刊。

妄想的数学の果てに、彼女の存在を証明しようとする阿呆大学生やら、自らの四畳半に立てこもり王国を建国する阿呆、と一人の阿呆にスポットを当てず、オムニバス形式で次々と阿呆な男子大学生をとりあげているのですが、これがちょっと幻想小説の様相を呈しており、誰の視点から語られているのかも、よくわからないこともり、ありていにいえば、これまでの駄目大学生の面白さを期待する私からはちょいと微妙な新刊でありました。

四畳半神話大系やら走れメロスのキャラクターなど、他作品の登場人物がちょいちょいと登場する仕様は、嬉しいものもありましたが、如何せん、メインストーリーが難解すぎるのがあかんかった。

というか、本当に能力者でちょっとびっくりしましたよ。モザイクを取り除けるとか、なんて地味で凄い能力なんだろう・・・

最後の独白展開は、阿呆さが痛々しいユーモラスさを醸し出すいつもと違って、本当に痛々しさがあったのは、今後の作品にも現れてくるのかしらん。

というわけで、今回はちょいと微妙でしたかねー
まだ未読の単行本が2冊たまってるのでそっちも早く読みたいところ。

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インシテミル 【7.5/10】

時給112,000円という法外なアルバイトに呼び寄せられたのは12人。ある者は求人内容を馬鹿にして、ある者はどうしてもお金が欲しくて、それぞれ動機は異なる12人が押し込められた地下施設にて始まる7日間の殺し合い。生き残るのは・・・

という「主催者」により作られたクローズドサークルによるミステリ殺人事件。12人に割り振られた凶器に、細かなルール、殺人によるボーナスポイントに犯人を推理することで得られるボーナスポイント。誰も何もしなければ1週間後には2千万近くを得られるはずなのに、やっぱり起きてしまう人死にに、疑心暗鬼に陥るメンバー、とこういう設定と展開だけどもう物語の牽引力はなかなかのものでしたが、やや登場人物の行動やら主催者の設定に駄目ダシを覚えてしまったのがやや残念。でも、後半を読むとこういう感想自体を抱くことも作者の手のひらの上という感じがしないでもない。

後半、名推理を披露した主人公がアレなことになった後のあの人との会話は、なんだか物語からドロップアウトした視点で物語を眺められるというなかなかの新鮮さ。

登場人物に感情移入できなり作りではあったけれども、それでも最後の後味の悪さは流石ですね。

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恋文の技術 【9/10】

京都の大学院研究生、守田一郎は教授の厚い好意によって、能登半島の研究所へ送られることに。無人駅にたどり着き、あれもこれもなく、ましてや自分を暖めてくれる人もいないので、恋しさのあまり京都の友人達へ手紙を送る守田。こうして、彼の手紙弁慶っぷりを如何なく発揮した文通武者修行が始まるのでありました。

やー自分の大好きな森見テイストが詰まりに詰まっていて大満足。偏屈で阿呆な大学生、万歳。今回は、ひたすら守田が様々な人たちへ送る文通の内容のみが章立てて書かれているという変わった構成をしていて、相手の返信は明示されないものの、守田からの手紙により、送り先の人間性が推測できるのがオモチロ可笑しい。

また、送り先の人間同士の隠れた関係性もちらほら垣間見え、その人間関係が複数の手紙のやり取りで立体的に見えてくるのも面白いところ。

最終章での唯一遅れなかった意中の女性へ送った手紙の内容は、恋文とは言い難いものの、手紙を自分もやってみたくなる程度には、真心の篭った内容で、非常にほんわかしましたね。以下は送り先+αの人物紹介

【谷口さん】
守田の研究所先の先輩。自作の不気味なドリンクを飲み、使いどころのない精力を悪戯に増強し続けるマンドリン愛好者。守田の不甲斐なさに不動明王としばしば化す。

【外堀を埋める友】
守田の研究生仲間で親友。マシマロのような男。とある女性に恋をし、何を血迷ったのか恋の相談をモリタにすることに。恋が実るまでパンツを履き替えないと、間違った努力を実行する阿呆な男。とる行動とる行動が裏目ってしまう運のなさはある意味美味しいやつですね。おっぱい星人であることは致し方ないとはしてもストーキングはいけません。

【私史上最高厄介なお姉様】
研究室の先輩で、絶対服従を誓われた女王様。文通の最中に復讐を企てるが・・・

【見どころのある少年】
守田が家庭教師をしていた生徒。勉強嫌いで、数々の家庭教師を撃退してきたものの、最近来た女性教師にはちょっと態度が軟化中。女性教師が森見登美彦のファンと知って脅迫状を送りつけるアグレッシブでませた少年。

【偏屈作家・森見登美彦】
〆切があぶないといいつつ、誰よりも多量に手紙を送り続ける阿呆な作家。

【心やさしき妹】
しばしば人の本質を突くのが玉に瑕なしっかりものの妹さん。それでも高等遊民になりてぇとかいってるおちゃめなところもあり。偏屈作家のファンその2。

【伊吹夏子さん】
守田の意中の君。大学院には進まず、大阪で就職した模様。偏屈作家のファンその3。

というわけで、激オススメです。

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スロウハイツの神様 上/下 【8.5/10】

自分に厳しく他人にも厳しい売れっ子脚本家赤羽環は、スロウハイツのオーナー。そこには、優しい世界を描くことにこだわり続ける漫画家の卵狩野、自分の感情、魂を作品に籠められない映画監督志望の正義、正義の彼女で画家志望のすみれ、敏腕編集者ハイパークールの黒木さん、高校時代からの環の親友で漫画家志望の円屋、そしてかつて自身の作品の読者が集団自殺を起こした経緯のある超人気作家チヨダ・コーキが住んでいる。そんな、クリエイター揃いの各々がそれぞれの主義主張をぶつけながらも絆を深めていくいい年こいた、デラ羨ましい青春物語。

我が強く、プライドも高い、仕事はできるが男の趣味は悪い、そんな赤羽環さんの第一印象が最後まで読んでみるとなんと可愛らしく一途で不器用な娘であったことか!本というものに人生を救われた彼女の、作品と作家に対する真摯な想いには、同じ本好きとして共感とどこか救われる気持がありますな。

そして、被害妄想な上に、対人コミュニケーション能力が低そうで、生活力皆無のチヨダ・コーキもといコウちゃんがいかす!最年長だけど良い意味で子供という彼の性質をスロウハイツの住人はある程度は的を射てはいるのだけど、実際のコウちゃんは人の感情に非常に聡く、またその言葉も真実を突いていたっていう点に関しては、みんな若干ずれた評価になってるんだよなぁーその一番の被害者は黒木さんなのが非常に笑える事実です。

既に成功している環という存在といまだ芽が出ない住人達の間で軋轢が生じるのも当然といえば当然なんだけど、本音でぶつかり合うその姿はいいもんですなぁ。環の厳しさはやりすぎにも思えるけど、ある意味本当の意味では優しさと信頼があるのがいい感じ。

最終章で、上巻の最初から細やかに積み重ねられた伏線が一気に明かされる描写にはニヤニヤ転がり読んでしまいました。因みに、住人で一番の腹黒はある意味狩野くんですよね。そして一癖ありそうなのに実際には裏表が一番ない見た目も中身もイケメンな正義には心からの拍手喝采を。

というわけで、非常に楽しめ、読後感がとても晴れやかな気持になれました。登場人物の感情はリアルなのに展開事態はご都合主義的なところも良い感じ。ちょいミステリ仕立てなストーリー展開も飽きさせませんでした。オススメ!

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僕僕先生 胡蝶の失くし物 【8/10】

モズグスさんの弟子のような生い立ちを経て、バーキラカに就職したみたいな殺し屋、劉欣さんが登場。うーんシリアスすぎるぜ。王弁さんとは住む世界どころか登場する作品世界が違いすぎる。

そんなクールな殺し屋さんでも家族愛は並々ならぬところがあり、またそこが弱点であるところが非常に萌えポイントである。もし女性であったならばメインヒロインをはれる器であったと思われます。しかしその弱点を突くのが我らが僕僕先生であるあたり流石は僕僕先生である。

そんな感じで今巻は劉欣さんが主役といっても過言ではないですね。それと皮娘の薄妃さんは剣士属性まで付加されてキャラ立ちがよくわからんことに。彼女と思い人の結末にはあぁと思わざるを得ないけどギリギリの一線で踏み込めない薄妃さんがホント好きだわー

というわけで、まるでゴルゴとのび太が一緒に旅をするかのようなカオス状況に加えまたまた蚕娘なんてキャラまで増えてしまい随分にぎやかに。王弁さんはホント人外キャラに好かれる人なんですなー

というわけで、今回も面白かった。次は王弁さんの活躍に期待したい。

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僕僕先生 薄妃の恋 【8.0/10】

5年ぶりに再会した美処女仙人僕僕先生と自堕落男王弁は再び旅を再開ってことで、中華ファンタジー第二巻。今回は、例によって僕僕先生から無茶振りされて料理大会にでることになった「王弁、料理勝負に出る」に、雨の止まない街で雷神の問題にまたまた無茶振りをされて王弁が出張る「雷神の子、友を得る」、他4本の短編を含む、短編集。

僕僕先生にいやらしいことを考える度に見抜かれて怒らる王弁が羨ましい。そして竿でぺちぺち叩かれたい。寝床にいつの間にか入り込んできては男の純情を弄ばれたいなぁ…狸寝入り仙人、万歳。

五年の歳月を経て王弁自身にも色々な冒険があったらしく、結構逞しくなってますね。まぁ、僕僕先生の無茶振りをこなしてきた経験が何よりなのかな?いついからなる場合にもお人よしで阿呆な王弁は何気に凄い傑物にも思えます。

意外とシビアな面をもってる僕僕先生とお人好しな王弁のコンビが良い感じ。なんだか悪そうな道士が登場したり仏界なんてものが存在していたりと世界のスケール観はどこまでも広がっていきますな。馬の吉良が今回空気すぎるのがちょい切なかったです。

というわけで、今回も師匠と弟子とのやり取りにニヤニヤさせてもらいました。

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僕僕先生 【8.5/10】

今は中国の、昔は唐の時代。定年を迎えた県令の子、王弁は自分が真面目に働かなくとも一生を穏やかに過ごせる財産があると悟った時から覚悟を決めたニートと化し、父親の説教をかわしては、穏やかな日々を過ごしておりました。

そんなある日、近くの山に仙人が訪れたと聞いた父親は不老長寿の秘訣を請うべく、しぶしぶ従う息子を使いにやったところ、どうみても少女の姿をとった僕僕先生に気に入られ、旅にでることになったのです。

という感じで始まる日本ファンタジーノベル大賞大賞受賞作。遠くの世界を見てみたいという欲求があるものの、基本無欲で怠惰で心優しい王弁が、ボクっ娘ならぬ僕僕先生との旅を経て、先生に恋をしたり、色々逞しく成長する過程が微笑ましい。

見た目は少女だけれども、老人に変化したり、五色の雲に乗っていたりで仙道を極めちゃってる上に、ホントに女性かどうかも不明な僕僕先生。僕僕先生に惚れては見たものの、軽く何千年単位で生きてるっぽい上にこちら側の心まで読まれてしまう王弁は相手の真意もわからず翻弄されたり懊悩してしまいます。

真意の見えずらい僕僕先生にもたまには驚いたり怒ったり、またまた王弁にたいしてデレてみたり、一緒に温泉に入ろうとしたりで、大変魅力的。そんな二人のやり取りはニヤニヤするしかないんだな、これが。まぁ、狼と香辛料のホロとロレンスの関係が好きならこっちも充分楽しめるかと思います。

旅の道程も、変な仙人や世界を創造した神々に出あったり、人界ではない別の世界にまで行ってしまったりとスケールがデカイ。最後は、綺麗な締め方だったけども、続きが普通に出ているようで驚き喜んだ。

というわけで、オススメ!

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別冊 図書館戦争Ⅰ

【8/10】

アニメも好調、図書館シリーズから劇甘スピンアウトが爆誕。

本編終了直後のエピソードから堂上と郁の甘々なバカップルぶり堪能しつつ、図書館で起こるドンパチとは関係の無い日常的な事件をいくつか垣間見るという短編形式。

もう、二十台後半と、三十過ぎのカップルの話とは到底思えん初々しさ。もっとキスしたいとか、初Hが恐いとか・・・なんじゃそりゃー!柴崎も、二十六歳純粋培養乙女・茨城産とかいってからかいたくもなるわ。

激甘バカップルは置いといて、ストーリーの方は子供の話が予想外の方向へ展開して面白かったですかね。柴崎と手塚の方もちまちまいい展開を見せてくれてニヤニヤ。

というわけで、あぁ胸ヤケした。まだ続くみたいなので、次回は柴崎、手塚でお願いします。

ごがつ屋さんぷーさん耳な風香

二人のゲームそっちのけの雑談が楽しすぎ

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容疑者Xの献身

容疑者Xの献身 容疑者Xの献身

著者:東野 圭吾
販売元:文藝春秋
Amazon.co.jpで詳細を確認する

【8.5/10】

・あらすじ
花岡靖子と娘の美里の下に現れた富樫という男は、のんだくれで靖子に暴力を働いては金をせびるろくでなしの元夫だった。
金を渡して追い出そうとした靖子であったが、美里の行動で結果的に富樫を殺すことになってしまう。殺害直後、自首を考えた靖子の家に訪れた隣の部屋の住人、石神は平然と親子にこういった。
「何かお手伝いできることがあるんじゃないかと思いまして」と。

・不器用で冷酷で純粋な男
花岡親子の犯罪隠蔽に献身的に尽くす数学教師石神。
隠蔽工作を考える頭の回転の速さと、用意周到さには舌を巻くばかり。
彼のやったことはもちろん許されることではないんですが、その動機を知るとその不器用さと純粋さには胸がつまってしまうのはどうしたことだろう。
最後のなんともいえない結末がよけい胸をつかれたり。

本作はコロンボや古畑のように既に犯人がわれた状態からのスタートですが、一応ミステリモノとして驚けるギミックは用意されてます。
書評サイトをいくつか見た限りでは、そう驚くほどのものではなさそうな感じだったような気もしますが私個人は割と驚きました。

・というわけで、
オススメ。個人的には東野作品の中では秘密に次ぐ面白さ。

以下ネタバレ反転
ことの発端となった美里がほとんど出番なしってどういうこと?
しかも最後に手首を切ったのはなにが原因かもよくわからない。
まぁこの辺はご想像におまかせしますという意図がびしびし感じれるし、色々考えられるんである意味面白いといえば面白いんですが、それでも彼女の内面描写が欲しかったといわざるを得ませんね。
因みに原因としては①石神のことが好きだったから②母親が再婚しそうで嫌だったから③献身的に尽くす石神の横で母親が別の男と仲良くしてるのに抗議?いやがらせ?など等、とか考えられるんですが、きっと手首を切った理由は一つだけじゃなくて色々あったんじゃないかと思いますね。

・うたわれるものリンク
影の宴さん11月11日はポッキー&プリッツの日でアルルゥ

くるぐる。さん右に同じでハクオロ&エルルゥ

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魍魎の匣

魍魎の匣―文庫版 (講談社文庫) 魍魎の匣―文庫版 (講談社文庫)

著者:京極 夏彦
販売元:講談社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

【7/10】

・あらすじ
クラスに友達もいなかった楠本頼子は、唯一気の許せる柚木加菜子の誘いで家出旅行に出る。しかし出発間もなく、駅のホームで加菜子は電車に轢かれて重症を負うことに。
現場に居合わせた刑事、木場は病院へ付き添うと、加菜子の姉と称する陽子を見て驚愕する。陽子は木場の憧れの女優だった。
陽子の希望で搬送されたなんとも奇妙な研究所で治療を受ける加菜子。そんな予断を許さない彼女に対し誘拐の脅迫状が届く。
一方、バラバラ殺人事件を関口と鳥口は取材していた。犯人は被害者の手足を箱にみつしりと詰めていた…

・京極堂シリーズ二作目
今年映画として公開予定の本作。…うーん、映像化して大丈夫なんだろうか?
と思わずにいられない程グロイ描写があるんですけど。
バラバラ殺人事件に、加菜子が電車で轢かれた事件、その他立て続けに事件は起きるわけですが、それら複数の事件に絡み合う人や箱。様々な伏線が明かされるラストは中々見事でしたが、なにより「匣」に憑かれた犯人の犯行のきっかけからその顛末はなかなかおどろおどろしかったですね。

・しかし、
分厚い。どうも自分は一気に読みたがる人間なんで、分厚くとも一気に読もうとするんですが、そうなると最後はヘロヘロでたとえ面白くてもいまいちになってしまう感が否めませんでした。やっぱ分厚い読み物は向いてない。

・そんなわけで、
非常に分厚いこの一冊。ミステリや人の狂気が受け付けられるかの前に、京極堂の話す独自の詭弁漂う長々とした理論、主張を読むのが苦痛だとかなり厳しい。
にしても彼は関口に対してものすごいツンデレを発揮しますね(笑)
ツン8デレ2ぐらいのある意味私の理想に近いツンデレです、この方。

因みに本作のお口直しにはすたひろBOXさんの描く、魍魎の匣漫画がオススメ。
う~ん、和む。ほう。

・うたわれるものリンク
ごがつ屋さんコミケレポ漫画続き
結構、うたわれコスの方おられたんですね。

影の宴さんカルラとアルルゥ
確かにあのシーンは印象的。そーいやうたわれキャラには子供と接するの苦手そうな人があんまり見当たらない。

・イラストリンク
くるぐる。さんDTB絵で黒、銀、猫
この表情乏しい二人が良い!

Cherry Berry Strawberryさん
TOP絵にうみねこの真理亜&C72新刊おまけハガキ絵
この真理亜はとてもかわいい真理亜。

・WEBコミリンク
MozHAMさんコミケレポ漫画
皇帝龍さんがかわいすぎる

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